太陽光発電や蓄電池など、よくわからない機械を買うのは不安だと感じる方も多いのではないでしょうか。
ある程度の知識があれば、見積りの内訳もわかりやすくなりますし、メーカーの比較もしやすくなります。太陽光発電で発電した電気を、どのようにして使えるようにするのか、自家発電の仕組みを知っておきましょう。
ここでは、太陽光発電を構成する機器と、その役割について解説します。
太陽光発電システムの仕組み
まずは、太陽光発電システムの仕組みを説明しましょう。太陽光発電は複雑そうに見えて、実は非常にシンプルです。
基本的な太陽光発電システムを構成する各機器と、その役割を紹介します。
①太陽電池モジュール(太陽光パネル):電気を作る
太陽光パネルは、太陽光のエネルギーから電気を作るのに必要な機器です。屋根などに取り付けたパネルで太陽光を受け、直流電流を発電します。
②接続箱:作った電気を集める
接続箱は、太陽光パネルで作った電気を集めるための機器です。パネルから送られてくる電気を1つにまとめ、パワーコンディショナーに送っています。
③パワーコンディショナー:直流・交流を変換する
パワーコンディショナー(パワコン)は電気の直流・交流を変換するための機器です。太陽光パネルで発電される電気は直流ですが、自宅で使う電気は交流です。つまり、太陽光パネルで発電した電気をそのまま家庭のコンセントでは使えないということになります。
そこで、パワコンを使い、直流を交流に変換するのです。
④室内分電盤:自宅の配線に電気を送る
分電盤はパワコンから送られてきた電気を、自宅の配線に分けるための機器です。この機器を通して、太陽光で作った電気が自宅のコンセントに届きます。
①~④のプロセスを経て、発電した電気が自宅のコンセントで使えるようになります。
蓄電池の仕組み
蓄電池にはプラスとマイナスの2つの電極があり、電解液との化学反応によって充放電が行われる仕組みです。プラスの電極は電解液に溶けにくいのですが、マイナスの電極は溶けやすい性質を持っています。電解質に溶ける程度は「イオン化傾向」として表され、2つの電極のイオン化傾向の差によって電圧が生じるのが特徴です。
溶けだした金属がマイナスからプラスに流れるのが放電で、マイナス極の金属が溶け出さなくなれば終わります。蓄電池は放電と反対の方向に電気を送ることで蓄電が可能になる仕組みで、正反対の化学反応を利用して充放電を繰り返すことができます。
蓄電池の働き
蓄電池には「一般負荷電源」と「重要負荷電源」があり、2つの電源は異なる分電盤につながっています。一般負荷電源は、平常時に運転モードに合わせた電力の供給や蓄電を行うものです。
停電時には一般負荷電源が使えなくなるため、放電が起こり重要負荷電源へ電力が送られます。停電が発生すると自動で電源が切り替わるのも蓄電池の注目すべき働きといえるでしょう。
蓄電池の種類と特徴
蓄電池に使われている主な電池は、鉛蓄電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、NAS電池の4種類です。同じ電池という名称が使われていますが、それぞれ異なった性質や特徴があることを知っておくと選ぶ際の参考になるでしょう。
鉛蓄電池
歴史があり使用実績が豊富、安価なのが特徴。過充電に強く適用温度範囲が広い。他の蓄電池よりも耐用年数が増えるにつれて性能が低下しやすい。
ニッケル水素電池
過充電や過放電に強く、急速充放電が可能なため広く活用されてきた。近年ではリチウムイオン電池に置き換わりつつある。
リチウムイオン電池
充放電ロスがなく高密度で高出力、小型化が実現しているのが特徴。近年では最も普及している。ほかの蓄電池よりも過充電や過放電には弱い。
NAS電池
充放電の効率が高く高寿命で高密度、安価なのが特徴。作動温度が300度程度必要で、有機電解液を利用しているため危険物としての取り扱いが必要。
ソーラーパネルの種類と特徴
ソーラーパネルには単結晶シリコンや多結晶シリコン、アモルファスシリコンなどシリコン系のほかに化合物系のパネルなどがあります。
単結晶型シリコン
単結晶型シリコンは、主に一般家庭用として使われています。価格が高いものの変換効率に優れているため、狭い屋根にも向いているのが特徴です。各メーカーには多彩な製品がラインナップされています。
多結晶シリコン
多結晶シリコンは単結晶よりも発電効率が多少下がるものの、コストパフォーマンスが高いことから産業用に使われるソーラーパネルです。
アモルファスシリコン
アモルファスシリコンはガラス状のシリコンで膜を作る製法で、高温に強く安価なのが特徴です。製品化が進む化合物系のソーラーパネルにはCISやCdTeなどがあり、それぞれ異なる化合物が配合されています。
蓄電池と太陽光発電を併せて設置する場合
太陽光発電システムと蓄電池は相性がよく、相乗効果が期待できる組み合わせです。自家消費型の発電がトレンドになったことで、両方の設置を希望する人も増えてきています。
太陽光発電システムと蓄電池の設置タイミングは、必ずしも同時である必要はありません。同時に設置することももちろんできますが、それぞれ異なるタイミングで設置することも可能です。
ここからは、太陽光発電で作った電気を蓄電池に溜める仕組みについて見ていきましょう。
①太陽光パネル~接続箱~パワーコンディショナー
パネルで発電した直流の電気を、太陽光発電のパワーコンディショナーでいったん交流の電気に変換します。ここで変換した電気の一部は、その場で家庭用電力として消費されることもあります。
②蓄電池のパワーコンディショナー~蓄電池
家庭で使う電気は交流ですが、蓄電池に溜められるのは直流の電気のみです。蓄電池に電気を溜めるためには、①で交流に変換した電気を、蓄電池のパワーコンディショナーで再度直流へ変換し直す必要があります。
太陽光発電と一般的な蓄電池を併用すると、それぞれが1台ずつパワコンを使うことになります。
太陽光発電のパワコンで発電した直流の電気を家庭で使える交流に変換し、蓄電池のパワコンで交流の電気を再び直流の電気に変換して蓄電池に溜めるという形になるのですね。
この方法には1つ大きなデメリットがあるのですが、これについては次の段落で詳しく解説します。
一般的な蓄電池を太陽光発電につけると効率が悪い理由
こうした2台のパワコンを使うことによって起きる問題は、太陽光発電の発電効率が悪くなってしまうことです。
電気を直流・交流に変換するときには、必ず電力のロスが発生します。変換回数が増えるほど無駄になる電気が増えて、使える電気が減ってしまうのです。
この問題は、ハイブリッド型蓄電池という、太陽光・蓄電池でパワコンを共用するタイプ
を選ぶことで解消できます。
ハイブリッド蓄電池とは?
ハイブリッド蓄電システムは、太陽光発電を導入する人にはおすすめの蓄電システムです。
その特徴は、パワコンが太陽光発電・蓄電池兼用となっている点、及び、太陽光パネルで発電した直流の電気を、そのまま蓄電できる点にあります。
つまり、蓄電の際に、直流→交流の変換が行われないということです。そのため、蓄電時の変換ロスが抑えられ、結果的に発電した電気を効率よく使えるというメリットがあります。
太陽光発電と蓄電池を設置する場合(ハイブリッド蓄電池使用)
太陽光発電とハイブリッド蓄電池をセットで導入し、発電・蓄電を行う際の仕組みについては以下の通りです。
①太陽光パネル:発電する
屋根などに取り付けたパネルで、 太陽光のエネルギーから直流電流を発電します。
②接続ユニット(接続箱):発電した電気を集める
複数のパネルから出力された電気をまとめてパワーコンディショナーに送ります。
③パワーコンディショナー:電気を変換する
太陽光パネルで発電された直流電流を、自宅で使える交流電流に変換する。
④太陽光発電・蓄電対応分電盤:自宅の配線に電気を送る
家庭内の各電化製品へ交流の電流を送ります。
⑤蓄電池:余った電気を溜める
余った電気を直流のまま貯めておき、必要な時に分電盤に戻して使います。さらに余った電気は売電することもできます。
太陽光発電をすでに設置していて、蓄電池を後付けで設置する場合は、パワコンをハイブリッド型に変えれば同じ仕組みになります。
現在、すでに各メーカーからハイブリッド蓄電池が発売されるなど、ハイブリッド型蓄電池は今後の蓄電池の主流といえる存在になりつつあります。せっかく発電した電気を無駄にしないためにも、蓄電池と太陽光発電を併用するなら、ハイブリッド蓄電池を検討してみてはどうでしょうか。
蓄電池と太陽光発電を安く設置する方法
売電収入と電気代節約のために、太陽光発電を始めようとお考えかもしれません。蓄電池の価格もずいぶんと安くなっていますので、蓄電池と太陽光発電をセットで導入するのも検討してはいかがでしょうか。
なお、後付けで蓄電池を導入する場合は設置工事が2回必要になるため、トータルの費用が割高になってしまいます。今から太陽光発電と蓄電池を検討している場合は、同時設置の方が費用を節約できてお得です。
少しでも安く蓄電池を買うためには、購入する業者を慎重に選ぶことが重要。1社の価格だけ見て決めるのではなく、複数社から見積りを取って価格を比較することをおすすめします。
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